徒然散歩

経済や数学など自分の興味ある分野について書いています。

数の風景-103

 閑話休題(4)  実数解と虚数

 高次方程式の解についてここまで見てきた限りでは、特別な形の
 式を除いてR,i共に0となる完全な零点はほぼ見つかりません。

 このことは物理の世界のいろいろな現象を連想させます。
 つぎのようなコイルに交流電圧Vを印加します。コイルに印加され
 る電圧に対して、流れる電流 i の波形はつぎのように計算され
 ます。ここで は便宜上ωL=1としています。
 電圧波形Vを実数Rの軌跡、電流 i を虚数iの軌跡と見立てたとき、
 その波形はeのiθ乗 のグラフと同じ関係になっています。

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 また 質量mと加速度αの間にも似たような関係が見られます。
 質量mの点があるとします。その点が位相θを伴ってcosθの
 カーブで振動するとします。点mがそのように動くには、cosθ
 の微分であるα=-sinθがその点に、力F=mαとしてかかる
 必要があります。質量mの動きを実数Rの軌跡、加速度αの
 大きさを虚数iの軌跡と見立てたとき、符号は異なりますが、似た
 ようなsin,cosの絡みが見られます。つぎの図ではm=1と
 して表しました。

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 このように、物理の世界ではRと i とは相互に影響しあう表裏
 一体のものであるように見えてきます。一方、Rと i とが同時に
 0となる完全な零点は見られません。
 数学においても同じように、実数Rの零点を主対象として捉える
 とき、R,iともに0である完全な零点を求める必要性は必ずしも
 ないような気がします。

 

 

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