高次方程式の解についてここまで見てきた限りでは、特別な形の
式を除いてR,i共に0となる完全な零点はほぼ見つかりません。
このことは物理の世界のいろいろな現象を連想させます。
つぎのようなコイルに交流電圧Vを印加します。コイルに印加され
る電圧に対して、流れる電流 i の波形はつぎのように計算され
ます。ここで は便宜上ωL=1としています。
電圧波形Vを実数Rの軌跡、電流 i を虚数iの軌跡と見立てたとき、
その波形はeのiθ乗 のグラフと同じ関係になっています。
また 質量mと加速度αの間にも似たような関係が見られます。
質量mの点があるとします。その点が位相θを伴ってcosθの
カーブで振動するとします。点mがそのように動くには、cosθ
の微分であるα=-sinθがその点に、力F=mαとしてかかる
必要があります。質量mの動きを実数Rの軌跡、加速度αの
大きさを虚数iの軌跡と見立てたとき、符号は異なりますが、似た
ようなsin,cosの絡みが見られます。つぎの図ではm=1と
して表しました。
このように、物理の世界ではRと i とは相互に影響しあう表裏
一体のものであるように見えてきます。一方、Rと i とが同時に
0となる完全な零点は見られません。
数学においても同じように、実数Rの零点を主対象として捉える
とき、R,iともに0である完全な零点を求める必要性は必ずしも
ないような気がします。