徒然散歩

経済や数学など自分の興味ある分野について書いています。

数の風景-47

 閑話休題(2)


 ここまで数の景色を眺めてきて、現実の世界とは一体何なのかとつい考えて
 しまいます。
 目に見える世界が現実だとすると、地上の目に見える現象はほぼリアルタイム
 に伝わってくるからまあ現実だと受け入れられますが、それに加えて同時性が
 現実の条件だとすると、空に見える太陽や月や星々の姿は現実のものといえる
 でしょうか。
 地球と月との距離は約38万km、地球と太陽との距離は約1億5千万km、光
 の速度は秒速 約30万kmだから、地球上の私たちが見る月は約1.3秒過去
 の姿、太陽は約500秒つまり約8分20秒過去の姿ということになります。つまり
 厳密には月や太陽の姿は現実のものではないということになります。
 まして夜空に輝く何光年、何万光年もの距離にある星々の瞬きは何年も、何万
 年も過去の姿になります。

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 ここで発信と受信の2つの面で考えてみます。まず受信は天文台で宇宙観測
 しているような状況です。望遠鏡で見える宇宙は遠方ほど遠い過去の出来事
 になります。これは遠い宇宙に視点の中心を移せば、そこで発生した出来事の
 情報が私たちの地球に届いてそのことに私たちが気づくのに長い時間がかかる
 ということだから、私たちは遠い宇宙より相当遅れた時間帯に住んでいることに
 なります。
 一方、発信の面では、たとえば甲子園球場のナイター設備のライトが今、点灯
 したとします。するとその光はノイズにかき消されなければ約1.3秒後に月の
 表面から、約8分20秒後に太陽までの距離付近から、何万年か後に何万光年
 も離れた天体から観測されるでしょう。つまり、ライトの点灯に限っては甲子園
 球場が時間の先端にあることになります。
 ごく当たり前のことなのに発信と受信を総合したときになんだか不思議な感覚に
 陥ってしまいます。このような世界での微積分はひょっとするとオイラーの公式
 の微積分のように頭の中ではちょっと理解できないような奇妙なことになるの
 かもしれません。

 

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