徒然散歩

経済や数学など自分の興味ある分野について書いています。

マジ経92  格差是正の必要性

 豊かな社会になるほど投資効果は小さくなってくるため、投資増によって雇用増を実現するのは難しくなってくるとケインズは指摘している。著書「雇用・利子および貨幣の一般理論」の中につぎのような記述がある。「完全雇用の状態に近づくにつれて限界消費性向は着実に低下していくというわれわれの想定が正しいならば、さらに投資を増加することによってさらに一定の雇用増加を確保することは、次第に困難となるであろう」
 ここに書かれていることを自分流に解釈すればつぎのようになる。豊かな社会になるにつれて投資増分をより多くの総需要増分に結びつけていくのが難かしくなり、最後には総需要増分は投資増分に限りなく近づいていく、すなわち投資効果はなくなっていく。投資は生産増対応分は減少し、生産設備更新や維持管理に必要な分により多く割かれるようになり、投資に伴う雇用増は期待できなくなる。
 この結果、豊かな社会になっても非自発的失業は無くならず、社会から貧困をなくしていくことがますます困難になってくる。貧富の格差が大きくなるとその格差は次の世代へと継承される。とくに貧困は何の是正処置もなされないなら次の世代へと継承され(貧困の連鎖)、大きな社会問題として残される。
 豊かな社会は生産力や供給力が拡充している一方、貧困層には潜在的需要はあるがそれを実現する貨幣の手持ちがない。しからば社会の富をできるだけ多くの人が享受できるよう貨幣を還流させる仕組みを構築し、それに向けて経済構造を少しずつ変化させていく必要がある。格差是正の努力が実り、貧困層の所得が増えれば実需増の効果となって現れやすいだろう。これがまた富裕層が投資している産業の売上増となって還流し、全体として経済が活性化してくることが期待できる。

  <ヒイラギ> ヒイラギのトゲに優しく匂う花

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