徒然散歩

経済や数学など自分の興味ある分野について書いています。

数の風景-62

 素数の近似式(3)


 素数の近似式として取り上げた nの(2/e)乗 は自然数nが1000を
 超える領域では誤差が急激に拡大してしまうという、致命的な欠陥が
 みつかりました。そこでもっと大きいnの領域でも精度の良い近似式は
 ないか検討してみるべく、素数定理の式にたち返って探してみました。
 その結果、素数定理の式と類似のつぎの式に到達しました。
 自然数nまでの素数累計推定値をP(n)とすると

       P(n) = n/(log n - 1)

 この式は理論的に導き出したものではなく、実測値 π(n) に基づいて
 出しました。
 素数定理より、n/log n ~ π(n) だから、logn ~ n/π(n) の
 関係にあります。 (注)「~」 は 「近似」を表す
 そこで、n≦1000の範囲で n/π(n) と log n の値を見てみます。
 ちなみにπ(n)値の出典は「素数に憑かれた人たち」です。

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 つぎにn≧1000の範囲で見てみます。

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 数字をよく見ると、自然数 n が大きくなるにつれ、その対数 log n と
  n/π(n) とが  log n - n/π(n) ~ 1 なる関係に近づくようです。 
 そこで上の各nについて log n - n/π(n) を計算してみました。

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 素数個数π(n)の推定値をP(n)とおいて、 log n - n/P(n) = 1 
 から P(n) が求められました。

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 結果は自然数n>200ではまずまずの精度になりました。グラフで
 誤差率を見るとつぎのようになります。

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 (注)
 これはフランスの数学者ルジャンドルが1800年頃に発表した「数論」
 の中に   π(x) ~ x/( log x - A)
 と記されているそうです。 Aは定数で、ルジャンドルが与えた値は
  A = 1.08366 だそうです。
 「素数に憑かれた人たち」でも触れられていまますが、「明解 ゼータ
 関数とリーマン予想」(ハロルド・M・エドワース著) の中で紹介され、
 詳しく解説されています。 著者によると定数Aの値は上の値でなけ
 ればならない必然性はないとのことです。

 どうも私は200年ほど昔の世界をさ迷っていたことにやっと気付き
 ました (笑)

 

 

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数の風景-61

 素数の近似式(2)

 前回、素数の近似式として、nの(2/e)乗なる式を見てみました。実は
 この式は自然数nが1000を超える領域では誤差が急激に拡大してしま
 うことが判明しました。

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 n<1000の領域ではかなり良い近似になっています。しかしそれから
 先が問題で、nが10の4乗では誤差は-28.6%、nが10の6乗では
 -91.7%にもなります。そしてそれ以上の領域では実測値の1%にも
 満たなくなってしまいます。ということで残念な結果になってしまいました。
 それにしても、この式がn<1000の領域でそこそこ良い素数の近似に
 なっている理由は何なのでしょうか。ただの偶然なのでしょうか。

 

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数の風景-60

 素数の近似式(1)

 前回までに素数定理の2つの計算、X/logX と Li(x) から計算した値
 は n<1000 の範囲ではカウントした値 π(n)に比べて数%~10%
 程度離れた値になっています。10の6乗を超える数の領域ではその
 誤差は数%以下に縮小していくようですが0にはならないようです。
 そこでもっと実際の素数の増え方に近い数式はないだろうかと探して
 いたところ、ありました。それはつぎのような式です。

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 計算結果と結果のグラフはつぎのようになります。比較のために素数
 定理 (n/log n ) の数値も表示しています。
 nの(2/e)乗の計算結果は素数累計の実測値π(n)とn<1000の領域

 で良 く合っています。誤差はn=100で+18.4%とちょっと大きいですが、
 n=640~645あたりで実測値π(n)と交差しており、n=1000では
 -4.1%になります。

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数の風景-59

 素数定理(2)

 ここで前回とは別の方面から Li(x) の値を計算してみます。 logX の
  log を計算するという方法で計算してみます。

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 この計算式に基づいて計算してみました。

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 ここでの 計算結果は、前回の計算結果よりさらにLi(x) に近い値となり
 ました。

 

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数の風景-58

 素数定理(1)

 素数については数の風景-7で触れていますが、その後も出てきたので
 もう少し詳しく見てみます。
 1,2,3、・・・と数えていく自然数nの中に素数はいかにも気まぐれに存在
 しているように見えますが、その増え方には一定の法則があると考えられ

 素数定理はそこから生まれたもののようです。
 「素数に憑かれた人たち」の著者ジョン・ダービーシャーによると、素数
 理には2通りの表し方があって、1つは X/logX で表され、2つ目はつぎ
 のような「対数積分関数」(以下、Li(x) と表示)でも表されているようです。

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 ここで X は正の整数です。自然数nと同じなので、これからしばらく入り乱
 れて出てくるかもしれませんが、基本的に同じ扱いとなります。
 ここで2つの素数定理についてn≦1000の範囲で計算した値をグラフで
 見てみます。

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 ここで Li(x)の値は∑1/logxとして計算しているので、X=1から

 1刻みで計算し、その値を各n値までの合計値で表しています。
 π(n)は素数の実際の累積個数です。 図で X/logX はπ(n)より小さく、
 Li(x)はπ(n)より大きくなっています。 この差は何でしょうか。計算して
 みました。

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 表から素数定理 X/logX に差の値 B を加えた値は、3~4ほど大きい
 けれど、ほぼ Li(x)に近い値になりました。

 

 

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数の風景-57

 オイラー定数(3)

 オイラー定数の値については前回計算しました。ここでは刻みをもっと
 小さくして値がどうなるか調べてみます。
 つぎの図は数の刻みの幅を1から 0.5、0.2、0.1 へと順次小さく
 していくことにより、その値がどのように変化していくかを見るものです。
 計算はつぎの式で行いました。

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 n=10、n=100の場合についてグラフにしてみました。

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 刻みの幅が小さくなるほど、前回図示した緑の線の長さは小さくなって
 いき、ついにはつぎの式にたどり着きます。このとき、緑の線の長さ
 すなわちlogXとの差は0になります。

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 整数1を基底とする1刻みの数体系にはオイラー定数が付随してくる
 けれども、logXを基底とする数体系にはその成分が除かれている
 ように思われます。

 

 

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数の風景-56

 オイラー定数(2)


 前回、オイラー定数にふれましたが、これはどういうものか少し立ち入って
 調べてみます。

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 上の式にはΣの項がありますが、この項は 1/1+1/2+1/3+・・・
 という分数の和になっています。これは調和級数と呼ばれている分数和
 です。
 調和級数を1から1/nまで足していく作業を延々n=∞に向かってやって
 いき、そこから log n を引くとオイラー定数が現れます。
 分数の和の関数はなめらかな曲線にはなっていなくて、幅1の階段のよう
 になっています。

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 この関数から log n を引いた値がオイラー定数になるようです。グラフで
 表せばつぎのようになります。

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 図で 1/n の累計値から log n を引いた値は緑の線の長さで表されます。
 この値の推移を赤の曲線で表しました。 n→∞で究極のγ値、すなわち
 オイラー定数に収束するようです。

 

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