徒然散歩

経済や数学など自分の興味ある分野について書いています。

数の風景-45

(1+i)の累乗の効果


 前回、オイラーの公式の1階微分で、複素数の式本体に(1+i)が1つ掛かって
 くるという奇妙なことになりましたが、これはどのような効果をもたらすのでしょうか。その効果を探るため、図を交えて考えてみます。
 微分1階に応じて(1+i)が1個掛けられる関係を図にしてみるべく、(1+i)を cos v+i sin v に掛けてグラフに表示してみました。
 これをみると、つぎのように実数部、虚数部ともに位相が +π/4 だけシフトして
 いることがわかります。

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 このように微分のたびに位相がπ/4 だけ進んでいきます。また変化の大きさを
 表す振幅は微分のたびに大きくなっていきます。
 積分の場合は微分とは逆に、階を重ねるごとに位相が π/4 だけ遅れていき
 ます。また振幅は積分のたびに小さい値に収束していくようです。

 

 

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数の風景-44


 オイラーの公式を用いた微積分の連鎖の検討(2)


 前回、実数部指数uが定数の場合について考えましたが、今回はuが1次変数の
 場合について微積分を考えてみます。
 関数 f(u)・g(v) の微分は f’(u)、g’(v)が f(u)、g(v)の微分関数である
 とき、 f’(u)・g(v)+f(u)・g’(v) となる関係を利用して

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 このようにオイラーの公式を用いた複素変数について微積分を行うことにより、
 微積分の連鎖が途切れないようにすることができました。
 
 しかしオイラーの公式微積分は、これまでの微積分のイメージと全く異なって
 います。実数の式では積分は曲線y=f(x)がy=0の線との間に作る面積を、
 微分は曲線f(x)の傾きの変動を表します。しかし、ここに見る複素数微積分は、
 複素数の式本体には変化がなく、eの実数部指数が1次の変数uで虚数部指数が
 +iv であるとき、微分を1回するたびに(1+i)が1つ掛かってくる、逆に積分を1回
 するたびに1/(1+i)が1つ掛かってくるという奇妙なことになりました。
 

 

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数の風景-43


 オイラーの公式を用いた微積分の連鎖の検討(1)

 

 オイラーの公式を用いることにより、累乗根の計算で発生する虚数の問題は
 解決しましたが、微積分の連鎖が途切れる問題はどうでしょうか。
 ここではオイラーの公式を用いた複素数を2つの変数u,vで表すことにします。

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 この式の変数u,vについて微分積分を考えてみます。 まず実数部指数uが
 変数ではなく定数の場合について考えてみます。
 eの虚数部指数が+iv であるとき、三角関数表示は cos v+i sin v
 となるから、その微分の式は-sin v+i cos vとなります。
 ここで、-sin v = cos(v+π/2)、cos v = sin(v+π/2)なので

 微分後の式は cos(v+π/2)+i sin(v+π/2) となります。

 eの虚数部指数が-iv であるとき、その微分後の式は

 cos(v+π/2)-i sin(v+π/2)となります。

 このような計算の結果はつぎのようにまとめられます。

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 これをグラフ表示してみると、虚数部指数が+iv であるとき+方向 に、-iv で
 あるとき-方向に、微分のたびに実数部、虚数部ともにπ/2 だけシフトして
 いくことがわかります。

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 積分の場合は微分の逆だから、積分のたびに位相が 逆方向にπ/2 だけシフト
 していくことが容易にわかります。

 

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数の風景-42

 オイラーの公式を用いた累乗、累乗根表示

 ここで複素数 A+iB についてオイラーの公式を用いて累乗、累乗根を計算
 してみます。

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 このように、オイラーの公式を応用することにより、無制限の種類の虚数の問題
 は回避されました。計算結果を図に表せばつぎのようになります。

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 累乗の場合は、2乗のときは角度Θが2Θに、その2乗は角度が4Θにと
 いうふうに、角度がどんどん大きくなっていきます。逆に累乗根の場合は、
 1/2乗のときは角度ΘがΘ/2に、その1/2乗は角度がΘ/4にという
 ふうに、角度が0に向かってどんどん小さくなっていきます。角度だけでなく
 辺の長さも変化します。aが1を超えるとき、累乗を重ねるほどに辺の長さは
 大きくなっていきます。逆に累乗根の場合は辺の長さはどんどん小さくなって
 いき、最終的にはeの0乗つまり1に収束します。

 

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数の風景-41

 オイラーの公式を用いた複素数表示


 オイラーの公式には前にも触れましたが、ここではその公式を応用した複素数
 表示について記述します。
 実数部をA、虚数部をBとして、A,Bをそれぞれつぎのように表します。

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 このように、オイラーの公式を用いてeの指数上で複素数の計算を行います。
 そうすることで、計算結果をeの指数の世界に閉じ込めてしまう効果があり、そこ
 で扱われる数の世界の全体は実数+虚数iの世界からはみ出すことがなくなる
 のではないでしょうか

 

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数の風景-40

 xをeのt乗で表す

 数の風景-10で、実数の複数回平方根をとるたびに別種の虚数記号が増え
 ていき収拾がつかなくなるのではと考えました。これについてはあとでじっくり
 考えるとして、とりあえず多くの種類の虚数を封印する方法がないかどうか考え
 てみます。 まず、数Xをeの指数で表すことで、2乗の繰り返しと平方根の繰り
 返しを行ってみて、この問題がどうなるか見てみます。

 

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 やはり同じように別種の虚数マークが際限なく増えていきます。
 考えてみれば当前のことで、Xを単にeの指数に切り替えただけでは実数aと同じ
 ようにeの前にいろいろな虚数マークが現れてくるだけです。

 この問題の解決には「オイラーの公式」に頼らざるをえないのではないでしょうか。
 実数Xまたはそれを含む複素数をeの指数に変換した後、「eも含めてまるごと」
 平方根をとるのではなく、その平方根を「eの指数に対して」とることにより、計算
 結果もeの指数の世界に留まらせようとするのです。また、ド・モアブルの定理も
 eの指数の計算の範疇に入ると考えます。

 

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数の風景-39

 閑話休題(1)

 今回は一休みです。
 ここで実数と虚数、+と-について私のイメージを描写してみます。
 ここには私の独断と偏見が充満していることをお断りしておきます。

 それは真っ直ぐな1本道をてくてくと歩いている自分がいて、前には
 これから近づいてきて自分の足元に来る道、後ろには通り過ぎて遠
 ざかっていく道が続いているような世界です。
 数の世界ではこれから通る道が+の数、通り過ぎてきた道が-の数、
 そして左右に見える景色は虚数iの世界です。-や虚数iの世界はこれ
 から実現することはできない世界です。
 実は道は1本でなくてもよく、地平線まで広がる大草原でもいいのです。
 今ここを歩いている自分が向かっている正面の一直線が+です。
 そして後ろの正面から伸びる一直線が-です。常に自分の足元が0で
 線の手前が小さい数、先の方が大きい数になります。そしていつも左右
 の景色は i の世界です。右の一直線が-i の世界、左の一直線が+i
 の世界となります。

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 通り過ぎてきたところが恋しくなって引き返し始めた瞬間にその道は+
 となり、これまでの+の道は-の世界への道となるでしょう。
 そしてたどりついた元のところは、自分が通り過ぎてきたのは確かだけれ
 ど、それは隔絶された過去の世界の出来事であり、現在に引き戻すこと
 はできません。
 -の世界と同様、±i の世界もこのままでは実現できません。右の景色に
 惹かれて右へ向かい始めた瞬間、その景色は+の世界となり、そこへの
 道は+の道となります。
 じっとしてただ周りを見回しているだけでは過去の情報が景色となって
 目に入ってくるだけです。いわば四方を過去(-)に取り囲まれている
 ような状況です。じっと立ち止まっているのではなく動き出すことで+の
 世界が開けてくるでしょう。

 

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